この科目は、メディア授業の要件となるレポート提出の一つです。設題が群を抜いて多く、また講評も同様であり、2回に分けて記しています。今回はその後編です。
前回同様、1回目のレポート→講評→2回目のレポート→講評の要点を部分ごとに載せます。
ではまず、図書館の調査の内容です。
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(1)分類表示の調査
市内の23館中、蔵書数の一番多い市立J図書館を調査した(蔵書49万冊)。分類表示は、原則としてNDC分類記号に従っているが、ビジネス支援、音楽、医療・健康という3つの主題別コーナーがあるのが特色だ。
入口付近の壁などに、書架案内図が掲示されている。利用者が自由に持っていけるA4サイズの書架案内図も置いてある。案内図には、書架のテーマや通し番号、おおまかなNDC分類記号(例えば「520~」)が表示されている。
NDCの解釈方法、書架の見つけ方などの案内を表記し、ラミネート加工した解説板も入口付近に複数枚置いてあり、希望者は館内で携帯できる。
書架の側面には通し番号とテーマが掲げられ、資料を陳列している上部にも表示されている。資料の所在記号は2段で、上がNDC、下が受入年度。小説やエッセイは、下段が著者名の頭文字になっている。
絵本の所在記号は、上段が「E」で下段が著者名の頭文字。「昔話」「科学」「乳幼児」など、特に分けて展示している資料に関しては、さらに背表紙に分類ラベルを添付。
3ヵ所の主題別コーナーの資料は、所在記号の下に、「ビジネス」「音楽」「健康情報」という色分けしたラベルを添付、通常の分類法で並んでいる棚に配架しないように工夫されている。ビジネスコーナーには「白書」「政府刊行物」も近くに備えている。
しかし、この2階の主題別コーナーを知らず、1階の雑誌コーナーや参考図書コーナーで、音楽などの資料がないと勘違いされやすいのは課題だ。
以上
この部分に対する講評。
★NDC、書架分類、書誌分類それぞれの意味を、定義として明確に。
【評価できる点】
⓵蔵書の配置の工夫(3ヶ所の主題別コーナー)、館内案内、書架案内(書架の通し番号)、背ラベルの工夫(色分け、館独自の分類名称)、館独自のコーナーへの配置など、館内の書架分類の活用のしかた
②書誌分類を活用したOPACによる検索法
③所在記号の付与ではNDCの分類表示以外の工夫、NDCを活用していない事例
【足りない点】
⓵所在記号についてもっと明確に。
・「絵本」の他に同様のケースがあるか
・アルファベット記号は、別置記号とは違うのか
②書架分類と書誌分類に関わる具体例
③図書の背ラベルに貼られた所在記号について具体的に表示例を複数提示のこと
(2回目)
※序論を書いていなかったので、つけました。
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1 はじめに
日本の多くの図書館は、NDCに従った書架分類と、OPAC検索による書誌分類を併用している。現在の概要と今後の課題について、NDCに関する調査から考察する。
2 (1)図書館におけるNDCの調査と概要
市内の23館中、蔵書数49万冊とトップの市立J図書館を調査した。分類表示は、原則としてNDC分類記号に従っているが、ビジネス支援、音楽、医療・健康という3つの主題別コーナーがあるのが特色である。
書架案内図は入口付近の壁に掲示してあり、A4サイズの案内図用紙も配布している。案内図には書架の主題や「520~」などのおおまかなNDCの表示、柱の通し番号などが掲載されている。
資料の所在記号は2段で、上段がNDC、下段が受入年度(西暦下2桁)となっている。例えば「図書館活用術」は、「015/11」である。
小説と絵本は、下段が著者名の音である。例えば「将軍の子(佐藤巌太郎著)」は「F/サトウ」(FはfictionのF)、「ねぎぼうずのあさたろう(飯野和好著)」ならば「E/イ」(EはえほんのE)となる。絵本は所在記号の下部に「昔話」「科学」「乳幼児」の別置記号を添付し、特設コーナーに別置している。
3ヵ所の主題別コーナーの資料は、所在記号の下に「ビジネス」「音楽」「健康」の別置記号ラベルを添付している。例えば「会社をつくれば自由になれる」は「335/18/ビジネス」となる。
以上
再提出に関する講評
【改善した点】
・所在記号の付与では、具体例を挙げわかりやすくまとめている
【さらに課題とする点】
・書架分類と書誌分類に関わる具体例では、複数主題を有する図書について、着目を。
・分類表示や書架の配列、配架(作業)など、複数ケースを挙げるなどもう少し掘り下げる
では次に後半部分です。
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(2)分類(記号)活用の意義や課題
NDCを活用した書架分類法は、同じテーマの資料が集まっているので便利だが、違う書架に求める資料があったり、貸出中や閉架書庫にあれば対応できない。それを補うのが書誌分類法だ。館内には7台のOPACが稼働している。目録に当たることで、書架分類法では発見できなかった資料の情報をも得ることができる意義がある。
現代のコンピュータ目録による書誌分類法は、自然語による検索をしがちなため、ノイズやもれが多い。利用者に検索語の選び方をガイドする機会を提供すればよい(※1)。
利用者はインターネット検索に慣れているため、検索エンジンのような「もしかして」などの機能や、その利用者が過去に検索した資料から類推して提示するような機能、それらからおすすめの資料など、周辺情報も紹介する機能などがあれば使いやすいかもしれない。
※1 那須雅煕「第2版 情報資源組織論及び演習」2016 学文社
以上
講評
【評価する点】
⓵現状でのNDC分類による書架分類の利点と課題
②その課題の対応策としての書誌分類の役割を提示
③書架分類と書誌分類という2つの分類の機能を有する、NDC分類活用の意義が明確
④コンピュータ目録の検索機能に関わって、自らの見解
【改善点】
⓵書誌分類の特徴について、もう少し力を入れる
②NDCがなぜ必要なのか、その課題
③NDCを活用していない事例にも着目
☆書架分類及び書誌分類については、今一度テキスト(第5章6.分類作業)を参照のこと
☆「目録」についての考察も加えること
では2回目。結論部分を分けました。
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(2)分類(記号)活用の意義や課題
NDCを活用した書架分類法は、同主題の資料の集中に役立つが、そのNDC以外で同じテーマを含む資料の別書架への排架、閉架への排架、貸出中の資料には対応できないのが課題である。3つの主題別コーナーでNDCを度外視した書架分類をある程度追及しているのは評価できるが、漏れは出てくるものであるし、他主題では解決できない。
それを補う書誌分類法として、OPAC検索についてて図解したラミネート加工の案内板を複数枚、入口付近に置き周知に努めている。
3 まとめ
まだまだブラウジングだけで資料を探すことから抜け出せない利用者も多い。閉架方式から開架方式に変化した際の負の側面とも言えるが、OPAC検索や図書館員による支援で解決できる。また、NDCの効用が利用者に周知されているとは言い難い。利用者にNDCの構造や見方、検索語の選定についてガイドする機会を提供するなどの対応が求められる。ただ、OPAC検索も一字違いや類推・連想検索には対応できないため、今後さらなる機能の充実を望みたい。
以上
講評
【評価する点】
・結論部分を独立させたこと
・いくつか改善すべき点がある。今後は、結論部分にも更なる充実を!
と、あり、コメントを参照とありましたが、この以下の講評は、前回とほぼ同じでした。
全体的に言えることは、書誌分類と書架分類のそれぞれの利点と欠点を明確にし、どう補完し合えばいいのか、ということが大切だということです。
日常、図書館業務に携わっていると、OPACの使い方を分かっていると分かっていない利用者では、大きく対応が異なります。OPACは図書館にありますが、webOPACと機能が同じことも、あまり知られていません。
書架分類は、開架におけるブラウジングの利点があります。が、私自身、書架で借りたよりも、OPACで検索した本に当たりが多いのは、その本の「書誌詳細」を読んで、ピックアップできるからだと思います。タイトルや装丁に惹かれて「おもしろいかな」と思って借りると、「なんか思ったのと違う」な本であることもよくあります。書誌分類は、慣れればこれほど便利なものはありません。
ただし、利用者全員がOPACを使いこなせたら、図書館職員は不要だな、という気もします。ですから、自分はそれ以上のスキル、知識がないと存在価値がないと思いながら、仕事をしています。