近大通信 司書課程

2020年3月司書資格取得。

【情報サービス論】web試験解答の一例

この科目は、レファレンス業務において主題別組織が発展しにくい要因と、利用者目線での改善点について、意見を問われるものでした。

 これについては、主題別組織が機能している「優秀な」図書館の事例を思い出してまとめました。これも、「1つでもいいから、意欲的な図書館を徹底的にモノにしておく」ことで、すらすらと書けたテストでした。まあでも、ちょっと長いですね。最後の相互貸借の部分はなくてもいいですね。

 

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 日本におけるレファレンス業務組織づくりでは、機能別組織が中心的な考えとされてきた。しかし、オールマイティ型でサービスの質が低くなりがちである。

 アメリカで発展してきた主題別組織は、選書から整理・提供まで一貫して行うため、主題専門司書が養成されやすい。しかし日本では以下の8項目の不備により、なかなか発展しにくいのが実態である。

 1)それ相当の専門コレクション

 2)充分な人員数

 3)主題の専門家で書誌的知識を持った司書

 4)十分な床面積

 5)別組織としての総合的な窓口

 6)セクショナリズム防止のための調整 

 7)資料購入費

 8)主題に強い司書

 

 利用者視点から見た場合の改善・改革として、まず一番はじめに考えられるのは、足を運びやすい場の確保である。具体的には、レファレンスカウンターの設置であるが、「相談窓口」「何でも聞いてくださいね」の言葉や、「?」のサイン表示で、聞ける場所を明確化することである。

 次に、各書架における主題を利用者にわかりやすく表示することが有効である。それを館内案内図に具体的に書き込んで提示したり、「こんな相談があったら」などの解決のチラシなどを置くのもよい。例えば、「離婚における財産分与」「大人の発達障害」など、なかなか司書に言いづらい内容があった場合、その場所にまず行って、関連本を見てみようという気持ちを利用者に持ってもらえる。さらに、そのコーナーに、自分の探している資料を集めた、わかりやすいF&Qを伴う小さなテーマ本コーナーがあれば、利用者にとっては、ありがたい間接サービスとなる。

 

 各主題ごとにどんな疑問が寄せられるか、どんなテーマが求められているかについては、各職員が横断的に何かの各テーマの担当になるという方法が現実的である。重要なテーマのほか、NDCのいくつかの門ごとの担当になり、資料の選定、コーナー・棚管理、書庫への移管、廃棄、修理を一括して請け負い、そのテーマについて詳しくなり、主題別司書を養成していくというやり方である。1つのテーマに1人というような限定したものではなく、まずは、大まかに複数のテーマごとに分け、何種類かのテーマについて段階的に詳しくなっていき、いずれはあるテーマに関して高度な知識を持つ主題司書に育成していける可能性がある。

 

 例えば、利用者の興味・関心が多いと思われる「暮らし・健康」チーム、暮らし・健康以外の0・4・5・6・8門を管理するチーム、1・2・3門を管理するチーム、7・9門管理するチームというように、まずは大まかに分けるところから始めるのである。その中から、「ビジネスや法律に詳しい」「芸術的なことに関しては負けない」などの主題別司書が育ってくることだろう。

 

 さらに、利用者に対するアンケート調査で、「満足した点」「足りない点」を聞くのもよい。図書館でのレファレンスサービスや各コーナーに企画された棚から、解決した事項、満足した事例を積み重ねる。これらを形にすることは、図書館のレファレンス業務が順調に回っていることの表れであり、それぞれに分けられた主題チームの職員の士気も高まる。これらの「よい評価」を、広報誌に載せたり、実績報告することで、さらなる予算措置にもつながる可能性がある。

 

 また、アンケートで重要なのは、「足りない点」、つまりニーズを知ることができるという点である。どんなものが足りないか、どんなものを利用者は求めているかを具体的に把握することは、レファレンス業務の充実につながるし、「こういう質問が多いので、こういう参考図書を入れたい」「こういう要望があるため、この有料データベースを考慮したい」という根拠にもなる。

 

 また、利用者としては、必要な資料がその館にない場合も、他館に行けば入手できることを知ることも大変に助かるものである。図書館間の連携は、欠かせないが、連携自体を知らない利用者も多いと思われるので、「当館にない資料でも、他館との相互協力で取り寄せたりコピーすることができます」という情報を、利用者にわかるように伝えることも、双方にとって大変重要である。

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