近大通信 司書課程

2020年3月司書資格取得。

コロナ禍で広がる、電子書籍の可能性

この「余談」カテゴリーでは、日常で得たさまざまな情報の中で、「知っておくと、レポートとか試験でもしかして役に立つかも?」ということをメモしておこうと思います。学習の下地の材料のひとつになるかな、ぐらいの話です。

 と、思ったのも、昨日、読売の読者投稿欄でいい記事を見つけたからです。そういうのが、けっこう自分の日常に転がっているなぁ・・・と思ったためです。

 

福岡みやこ町の無職の男性72歳です。(20200526)

「図書館にも電子書籍

私は車椅子で生活している。町の図書館をよく利用しているが、新型コロナウイルス対策で休館になってしまった。困ったと思っていると、最近では電子書籍の貸し出しサービスを行っている図書館が、全国にかなりあるということを知った。

 電子書籍の貸し出しは24時間いつでも可能で、貸出期限が過ぎれば自動的に返却されるという。図書館に出向く必要もないので、高齢化がさらに進む今後、このサービスの需要は高まるのではないだろうか。近頃は、高齢者でもパソコンやスマートフォンタブレット端末を利用している人は多いからだ。

 私の町の図書館では、残念ながらまだ電子書籍の貸し出しは行われていないが、多くの図書館でぜひ導入してほしい。高齢者だけでなく、障害のある人たちにも、利便性が高いと思う。

 

この170字の投稿には、電子書籍の意義について、重要なことが詰まっています。

1つに、バリアの問題です。「遠い(家から外に出る)」「車椅子生活」を克服してこの方は図書館通いをされていたようです。それが「三密」という新たなバリアにより阻まれてしまいました。

つまり、図書館の存在自体が、もうこの方にとっては、「自分の読書・調査欲」にとってはバリアになっているということです。

それを解決するのが電子書籍だとされています。

 

2つには、「高齢者は機械に疎い」というイメージではなく、「高齢者こそ需要が高まる」と、高齢者自身が主張していることです。

 

3つには、高齢者だけではなく、障碍のある方にも便利では?と類推している点です。

 

これら3点の「電子書籍の意義」については、なんかのテキストに、堅苦しい言葉で説明があったように思います。しかし、それより、こう書かれるとすっと腑に落ちます。

 

何より、足の丈夫で、健康な専門家先生ではなく、当事者の主張です。「専門家の言ってることは、ホントだな!」ってことですね(つまり、案外、「それホント?」ってことがテキスト内にはあるということでもあります)。

これに自分の周りのお年寄りとかをイメージしたり、今回のような非常時のことを考えたりすると、より理解が深まるでしょう。

 

また、福岡県の電子書籍の普及率や、全国における町立図書館との対比などは、何かに使えるかもしれませんし。

 

私の市には図書館が23館ありますが、電子書籍を早めに取り入れています。しかしその内容が、あまりに貧弱です。小説も青空文庫ばかり、人気のコンテンツは料理本などでいつも借りられている、あとは市関係資料とか・・・。

それが休館中の5月6日に、300点弱を増加しました。その後、私は、新規登録者に電子書籍の説明をする際、蔵書が増えたので、おすすめしやすくなりました。HPから電子書籍の窓に飛ぶのですが、ログインパスワードが異なるので、ちょっとわかりにくいのです。電子書籍を画面で借りて、返し忘れはない・・と知ると、「それは便利ですね」という反応を、毎回いただきます。電子書籍はそういった利点もありますね。

 

ただし、電子書籍は、実際の書店を脅かすという専門家の意見もあります(記事(20200428)は読売の会員限定ですが一応貼っておきます)が、私は、「電子書籍を読んだ人が買ってもいいと思ったら、クリックして町の書店から買えるようなシステムを導入すればよい」という意見が実現すればいいのになと、思っています(※)

 

実際、コロナ禍における休館によって、電子書籍の貸出冊数が4倍に伸びたという記事がありました(20200523読売、会員限定記事)。全国図書館流通センター(TRC)の調査です。TRC運営の公共図書館281館の4月の電子書籍の貸出数は、前年同月の約4倍となる67000件だったとのことです。もちろん、指定管理ではない直営の公共図書館でも電子書籍を扱っていますので、目安ではありますが、非常時における電子書籍の可能性がよくわかる話です。この流れは止められないでしょう。

 

【関連:図書館情報技術論・図書館情報資源概論・図書館サービス特論】

 

細野公男、長塚隆「デジタル環境と図書館の未来」 に「電子書籍を読んだ人で、実際に本を買いたいと思った人5割、実際に買った人32%」という、確か外国のデータが載っていました。また、札幌市図書・情報館は「本を貸し出さない」というかなり斬新な図書館で(私はこの館長さんの講演を職員研修で聞いたことがあるのです)、当初、オープンしたら、まちの書店からは「本を買わなくなるのでは?」と敵外視されていたそうですが、開館したらそこで読んだ本を、まちの書店から買う人が増え、感謝されたそうです。一概に、図書館を書店と拮抗するものというふうにとらえるのは、古いんではないかなと思いました。